妻を亡った人へ

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拝啓 奥様には年余に亘る御病気お手厚い御看護のかいもなく、昨夜遂に御永眠の由御愁傷の段深く御察し申上げます。過日来御快方のように承っていましたので、ついお見舞も怠りがちのところへの御訃音(ごふいん)に接し、御哀悼と共に後悔の情に堪えません。

貞淑温良などいうあり来たりの言葉を以ては尽しかねます円満な御人格、年来御内助の功高く、貴兄にも、御児孫にもよく行き届いた御愛情の深い方でした。美しく、気高い御容姿が眼前にありありと浮かびます。長い御病気のあと、お苦しみもございませんでしたか。

一両日中に参上、万々伺いもし申し上げたいこともありますが、とりあえず御弔詞のみを書中に託します。皆様御疲れのないよう、御加餐(かさん)専一に祈り上げます。皆様によろしくお伝え下さいませ。敬具

残る者も哀れは同じかと(上の返事)

拝啓 荊妻(けいさい)死去に際しては、御懇篤な御弔辞を賜わり、有がたく御厚礼申し上げます。今更追惜いたしましても返らぬことではありますものの、子供達の無心な嬉戯(きぎ)を見ましては、一しお不憫の情に堪えません。

御過褒は敢えて当りませんが、回顧しますれば結婚以来十五星霜、必ずしも長かったとは申せませんが、何かにつけて思い出すことのみであります。逝く者も残る者も、共に哀れは同じかと、いささか寂寥(せきりょう)を感じております。

幸に、老母その他一同健康でおりますので、他事ながら御安心願いとう存じます。

愚痴めいたことを申し上げまして恥じ入りますが、右御礼かたがたの御挨拶まででございます。敬具

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