第13章 催促の手紙

催促の手紙の書き方について

 約束の期限が来たのに貸した金を返さないとか、代金を支払ってくれないとか、注文した品物をなかなか送って来ないとか、当然返事が来なければならないのに返事が来ないとか、その他まだいろいろな場合があるが、とにかく相手が履行すべきことを履行しない、そのままして置いたのではこちらが困る、こちらが迷惑する、そういう時に出すのが催促の手紙である。むずかしい言葉でいう督促状のこと、納めるべき税金を納めずにいると間違いなく税務署からやってくるハガキも督促状である。

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 ところでこの催促の手紙というもの、その書き方がなかなかむずかしい。というのは催促の手紙を書く時のこちらの心理は決して愉快なものではない。先ず大抵の場合は、不平なり不満なりの感情があるに違いない。だからその感情をありのままに出してしまうと、手紙の文面が荒々しくなったり強くなり過ぎたりする。一方そうした催促の手紙を貰った方はどうかというに、故意になすべきことをなさずにいるにしても、事情やむを得ずに遅れているにしても、そのいずれの場合でも、催促されるということは決してうれしいものではない、いや腹の立つことさえあるものである。さあ、こうなると何のことはない正面衝突で、ぶちこわしになってしまう。それでは実は催促が催促にならない。

 催促の手紙は喧嘩状でもなければ ましてや果たし状でもない 催促することによって貸した金を返して貰う、代金を払って貰う、貸した品物を返して貰う、返事に対して返事を貰う、そうすればいいのである。だから、その催促の目的を逹するために、どうすれば、どういう手紙を書けばいいか、そこに催促の手紙の書き方のむずかしさがある。

 ではどうしたらいいか。先ず一般的にいって、相手を怒らせてしまわないように気をつけることである、腹を立てたような露骨な書き方をして相手の感情を害してしまうと、俗にいう「売り言葉に買言葉」で かえって相手にどうにでもなれ」とすてばち的な態度に出られてしまうことになる。また真向から権利を振り廻して理屈ツぽく出ることも考えものである。これを一つの取引と考えるならば、この取引をして自分の方に有利になるように展開すればいいのだから、むしろやたらに先方を問責するのは賢明なやり方ではない。「どうにでもなれ」ではなくして、相手に「何とかしなければならない」と思わせ、それを実行させればいいのである。

 相手を責めるよりは、こちらが非常に困っているという意味を強調して、相手をして一刻も旱く約束を果さなければ申訳がない、気の毒である、相済まないと思うように書く、このことが最も大切である。「柔よく剛を制す」とか「真綿で首を締める」とかいうのが催促のコツである。負けるが勝ちである。ふんわりとしかも急所を逃がさぬようにして、当方の都合から催促せざるを得ない理由を説明し、困るから何とかしてほしいというように下手に出た方がよいようである。
 
一、貸金や品代金支払いの催促などの場合、貸借問題はややもすれば感情の行違いや誤解などを生じ易いから、成るべく早く解決して、円満な関係を続けたいという希望を、催促の理由とするのも相手の如何によっては賢明なやり方である。

二、立替金の支払いを催促する場合など 当然こちらが強く出ていいものであり、強く出たいところであるが、こんな時でさえ「払え」と書くよりは「払って下さい」と書いた方が催促の効果がある。

三、催促の手紙は大体あまり長々と書くべき性質のものではない。注文品の催促などは、催促の手紙の中では多少手厳しく書いてもよい方の部類に属する。

四、品物の催促には先方がわかっているとは思っても、もう一度品物や数量などを、それに若し必要ならば返済の期日までも指定して書くがよい。

五、前に依頼しておいたことをもう一応催促して依頼する場合がある。事情によっては決して失礼でも何でもなく、あるいは先方が前に頼まれたことを忘れているかも知れない。こういう時には「御迷惑相かけまじく」というような文句を入れるとよい。またその依頼に希望をつないでいると書くのも、いい催促の仕方である。

六、催促を受けた方では遅延の事情の如何にかかわらず、(1)先ず第一に誠意をもって陳謝し、(2)次には遅延の事情を明かにして相手の了解を求め、(3)次に催促されたものの出来る期日とか支払う期限とかを改めて願い出て相手の承諾を求め(4)最後に重ねて不都合や遅延を詑びる、大体こういう要領でなるべく早く、出来るだけ丁寧に返事を書くべきであろう。

七、二度三度と催促して何等の返事のない場合、返事があっても不得要領で相手に誠意がなく返済する意志が認められない場合、こういう時は相当の覚悟をもって厳しく書くがよい。また相手が非常に不徳義極まる行動に出たというような場合、こういう時はも早や催促の範囲を超えて処置しなければなるまい。

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