縁談の依頼

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娘の縁談を頼む(婦人用)

 日中はまだ夏の名残りもございますが、朝夕は殊の外涼しく、ようやく凌ぎよい時節となりました。御一同様には御覬賺よくお過ごしのことと、お悦び申し上げます。

 さて私どもの娘聡子のことでございますが、御承知のように高等学校を出ましてから、もうまる二年半にもなり、至らぬながら、お茶、生花、ピアノ、洋裁、和裁は少々、女一通りのことは習わせてまいりましたので、恰好のところがありましたら縁づけたいと考えるのでございます。が、何を申しましても、私どもは親戚といっては神田の福田のところ一軒だけ、その上交際は至って狭く、お願いする方も外にはないのでございます。

まだ二十歳でございますので、取り立てて急ぐわけでもありませんが、御交際のお広いあなた様におすがり申し上げて、お心がけおき戴きたいのでございます。何とぞ御聞き届け下さいますよう、私どもの家庭のことはすっかり御存じのあなた様ゆえ、お目がねにより然るべき御縁もございましたらとご御願い申し上げます次第でございます。もとよりふつつか者のこと、決して高望みはいたしません。御当人が丈夫で、しっかりした方ならば結構と存じます。

 いずれ近日中に本人を連れまして参上万々と存じますが、とりあえず御意を仰ぎおきたく、別封により最近撮りました写真二葉お送り申しましたゆえ、御心当りの方面によろしく御願い申し上げます。

 御主人様にもよろしく御とりなし御願い下さいますよう。平素の御懇情に甘えましての御願いまででございます。かしこ

弟の嫁を頼む

 拝啓 軽暖ようやくという季節、皆々様御清健の御事と大慶に存じます。

 何かといえばすぐお宅様を頼りとしてまことに申訳ありませんが、両親からの願い出でもありますので、厚顔の儀ながら申し上げます。

 実は弟の裕司こと、嫁さがしをしていますが、二三、話のありました向は、いわゆる帯に短したすきに長しで、こちらの短かずくめのことは棚に上げて、まとまりかねております。

清三は満では二十九、武田商事も無事に勤めて居り、この四月には雑貨部の課長代理というのになる由、給与は今のところ三十八万円、手取り三十二万円、辛うじて夫婦生活はなし得られる程度ながら、僕と違って酒もタバコも用いず、別に道楽もせず、時々映画を観る外には趣味もなく、謹直というよりも愚直型で、幸にどうやら上役にも可愛がられている様子ゆえ、嫁にひどい苦労をさせることもないと思っているのです。

ただ愚直のため、家を持ってからもあんなでは、世の荒波が凌げそうにもないので、健康で、悧発で、快活で、積極的な気性の嫁を持たせたく、そして、なるべく美しい人、あるいは愛嬌のある人をと思っている次第です。

贅沢をいうようですが、今一つ母が合性を気にしていて、二十、二十二二十三、二十六歳のお嬢さんのうち、なるべく若い方をなどといい出しており、誠に面倒な条件を書きますが、そこは老練な大兄のことゆえ、取捨然るべく御勘案の上、急がず、遅れずというところで御尽力を願いたいのであります。

 父が参上といってますが、お前の方から一度ざっくばらんにお願いした方が自分として伺いやすいといっていますので、勝手なことを並べました。写真と連れ書とを別封に託しました。よろしくお願いします。

 御両親へは父から改めてとのことですが、どうぞよろしく言上願い上げます。

 御自愛専一に、どうぞ。敬具

養子の世話を頼む(婦人用)

 心にはかけながら御無沙汰ばかり申し上げておりますが、皆様には御変りもなく御元気にて御消光(ごしょうこう)のおん事と存じ上げます。

 さて娘清子も本年二十四歳にもなりますので、養子を迎え度く存じますのですが、瓜のつるに茄子はならぬたとえ、御存じの通りの無器量な上に、仕込みも女学校卒業後和洋裁縫の手ほどき、割烹、お花、茶の湯など、ほんの真似事を致したばりでございますから、他人様に御願いもしにくいのでございますが、何日までも独りでおきますのは不愍(ふびん)が増す親心、貴女様の御交際関係に御心当りもございましたら、御世話頂きとう存じます。

いずれその内改めてお願いに上りますが、何分よろしくお願い申し上げます。かしこ

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