謝絶の手紙の書き方について

 謝絶の手紙 ― ことわりの手紙である。相于の希望なり申込みなりを「はい承知しました」といって承諾するのなら問題はないのだが、そうではなくて、これを断るのだから、その呼吸がなかなかむずかしいのである。なぜむずかしいかというと、こちらが断ることによって、(1) 相手の感情を害したくないから、(2)相手が失望する、その気持を十分に斟酌しなければならないから(3)相手に恥をかかせるようなことのないようにしなければならないからである。

 そこで謝絶の手紙を書く場合には、これこれの事情なり都合なりで折角の御申越しだがこれに応じることが出来ないからお断りするという意味をなるべく巧みに、しかも誠意を示して相手がよく納得するように丁寧に書くことが大切である。理由もいわずに冷淡にあっさり断ってしまうというのは礼を欠くばかりか、今後の交際上にも非常な障害となるものである。

特に相手が折角丁寧に招待をして来たような場合には、断るというよりは、むしろ「あやまる」というような気持で書けば間違いない。これが人の世のつきあいというものではないだろうか。

 一、先ず正直にこちらの事情を打明けて、理由をクドクドいわず、はっきり説明することが大切である。こしらえごとをしたり、嘘をついたり、責任を他人に押しつけたりしてことわるのは、かえってことわったが、ことわったにならないものである。

 二、謝絶の手紙はなるべく早いとこ書いてしまうがいい。書きにくいのでぐずぐずと日をのばしていると、先方では承知したものと思い込んでしまう場合があり、さあ、そうなるとますます書きにくくもあり、つい嘘をいうようなことにもなる。

 三、縁談を断る場合は、いわば先方の好意を断るのであるから、先ず予め先方の好意を謝し、理由を、それも先方になるほどと納得の行くような正しい理由を書いて、終りに近日拝眉の上という風に念を押すことが大切である。

 四、招待や勧誘に応じられない場合は、先方の好意を謝した上で、どうしてもおことわりしなければならない事情や真情を吐露して書くがいい。

折角楽しみにしているところに断りの手紙など貰ったら、失望もしようし、時には感情を害さないとも限らない。だから先方が「そういう訳なら仕方がないからこの次を楽しみにしましょう」と思う位に書きたいものである。

 五、無心や依頼を断る場合も、先方の感情を害さないように、それに応じられない事情を書いて、友情や交誼はあくまで円満に保って行くように注意しなければならない。

 六、来訪を断る場合は、都合のよい日を別に指定するか、改めてまたという風に書くこと。

 七、雇人を断るのには二つの場合がある。今まで雇っていたのを断るために保証人とか親元へことわり手紙を出す、こういう時は特別の場合でない限り、本人の悪いところなど書かずに、事業縮少のためというように書く。しかしそれも理由によっては、明らさまに本人の将来を注意して書いても差支ない。他の一つの場合、雇人の世話を頼んであったのを断る時には、なるべく早く理由を明記して出すがよい。

 八、注文を断る場合、自店に品切になっている時と、相手の支払状態などで断る時とあるが、こんな場合には極力奔走したが手に入らないとか、あるいは既に他店から注文を受けて手許に品切になるおそれがあるとかの理由をつけるのが穏当ではないだろうか。

 九、謝絶の手紙を書く人の気持ちはかなり苦しいものである。だからそうした手紙を受け取った時は、折り返しその断りを了承した旨の返事を書いてあげるがいい。その時の一枚のはがきがどんたに先方の心を明るくするかわからない。

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