謝礼の手紙の書き方について

 謝礼の手紙というのは、その手紙を出す相手が、自分に対して示してくれた好意なり尽力なりに対して「有がたい謝意」をあらわすものである。つまり礼手紙というもので、御礼は鄭重(ていちょう)であること、敏速であることが必要である。たとえばどんなに僅かなものを贈られたとしても、心からの感謝と満足の意味がそこにあふれていなければならない。

といって、ものには程々ということが大切で、礼もあまり言葉が過ぎればかえって「おべっか」となり軽薄にとれる、またあまりあっさりしていても先方に対して失礼に当る、この辺の心得がむずかしいが、大切なところである。

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 一、自分の心の中に感謝する気持がありながら、それが実際に手紙を書く段になると、今までの手紙の文なり型なりにとらわれて思うように書けないということがある。これらはつまないことである。そこで自分の心持をそのままに書くべきで、これが最もよい礼手紙となるのである。

 二、形式がきちんと整っていて、非の打ちどころがないほど上手に書けているような手紙でも、ほんとうに嬉しかった気持や、心の底から感謝している感情が文面にあふれているようでないと、相手は折角礼手紙を貰っても、少しも嬉しくないばかりかかえって失望する。

 三、謝礼の手紙を、しばらく経ってから出す人がある、この筆不精は最もいけない。こちらでは忘れていても相手はそのととを忘れやしないのだから、出来るだけ速かに出さなければならない。

 「延引ながら御礼申し上げます」よりも「取りあえず御礼申し上げます」の方が受取る人は気持がよい。

 四、招待の礼手紙はその招待から帰って来てからすぐに、また観劇などの場合も帰宅してからすぐに出した方がよろしい。お互にまだ興奮のさめない内に書いたり、読んだりすることは。真に心を打つ文章が出来、また受取った方も感銘が深い。

 五、訪問した後の礼手紙はその訪問の目的により、たとえばそれが何か悩みごとの相談であったのなら先方の環境について一応の挨拶をした後に、子供がとても喜んだ様子を書くなどして、こちらの感謝の気持をあらわす工夫をしなければならない。

 六、貰いものの礼手紙、これもよくあることだが、この品物の性質により、食物ならば「家族一同舌づつみを打って」とか、衣類ならとてもよく似合ういい柄で、見立てが上手であるとか、とにかく、でたらめになってはかえってぶちこわしになるが、こちらの喜びをあらわすこと。

 七、就職の世話をしてくれた礼の手紙の場合は、現在の与えられた職場が自分の性格にぴったり適っているとか、予想以上にいい地位であるとか、紹介者を安心させるようなことを、自分の喜びと共に書きあらわしたいものである。

 八、謝礼の手紙というものは、前項に挙げたものの他にその種類がいくらでもある。下宿を世所して貰った礼、旅行中世話になった礼、病気中に世話になった礼、病気見舞の礼、近火見舞の礼、借りものを返す時の礼、会葬の礼など、数えればきりがないが、人間生活のあらゆる面にわたって、人事往来のあるところ、そこには何かにつけて感謝を伴うもので、ここに感謝の礼手紙の往復が見られるのである。以下は文例についてその要領を会得して貰いたい。

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